Explanation 松尾直樹氏による方法論の概要説明

松尾直樹氏による方法論の概要説明

GHG排出削減効果推計と証書発行

節水は、水という貴重な資源を節約することができるわけですが、同時に、温室効果ガス排出削減にも寄与しています。

日本において,たとえば1立米の上水製造時にどの程度の温室効果ガスを排出しているか?下水処理時の場合にはどの程度か?ということを定量化するには、そのための考え方と計算方法を表した方法論が必要となります。

さいわい,アース&ウォーター社は、きちんと節水量を定量化する考え方を持ち、それに基づいた事業所ごとのモニタリングも行っておられます。

このモニターされた節水量から、上水および下水の両プロセスにともなう温室効果ガス排出量を事業所ごとに計算し、それを個々の事業所の排出削減量として証明することとしました。
方法論の考え方は、上水製造および下水処理時に用いられるエネルギー消費にともなうCO2排出量を、日本平均として求めたものです。

本来は、事業所の所在地や年によって異なってくるものですが、地域差や電力のCO2排出係数の年次格差を表現する意味はあまりないと考え、
公共の設備を用いる場合には、共通の値を用いています。
下水処理時のメタンに関しては、節水によって削減されるものではない、というロジックのもと、削減効果には効かないとしています。

以上の考え方をベースに節水器による温室効果ガス(GHGs)排出削減量算定のための方法論version 1を作成し、それを運用してきました。
上下水の供給や処理方法に応じて係数が異なってきます。

一方で、節水の対象は、冷水だけでなく、シャワーなどの温水も該当します。この場合、「加温」によるオンサイトのエネルギー消費削減効果を通じたCO2排出削減効果もあります。対象温水の範囲、加温による温度上昇などを決定し、またエネルギー源種別ごとに扱いを変える必要があるなど、より運用が複雑になりますが、CO2排出削減効果はより大きなものとなります。

今回新しく、この節湯効果も組み込んだ方法論をversion 2として作成し、節水設備事業者もアース&ウォーター社のみならず、一般社団法人日本節水協会の傘下企業を対象に拡げました。個々の事業所を対象とした証書も、PEARカーボンオフセット・イニシアティブという個社ではなく、一般社団法人日本カーボンオフセット協会として発行することとなり、より客観性を増すことになりました。

証書の内容に関しましては、節水量のモニタリングは節水装置事業者であるE&W社が責任を持つものですが、計算方法である方法論は株式会社PEARカーボンオフセット・イニシアティブが、事業所ごとの温室効果ガス排出削減量の値は、一般財団法人カーボンオフセット協会が責任を持つものです。

これによって、量としてかならずしも多くはないものの、気候変動問題への寄与の可視化がはかられ、より一層の努力がなされることを期待しています。

2022年6月
株式会社PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
代表取締役 松尾 直樹

松尾直樹氏プロフィール

松尾 直樹氏

◎現職
★(株) PEARカーボンオフセット・イニシアティブ
代表取締役[途上国事業開発]
★(有) クライメート・エキスパーツ
代表取締役[温暖化コンサルティング]
★(公財) 地球環境戦略研究機関
上席研究員/シニアフェロー[温暖化戦略研究]
★慶應義塾大学 非常勤講師[温暖化関係の大学院講師]
★(一社)カーボンオフセット協会 顧問
★(一社)日本節水協会 理事
◎旧職歴
(財) 地球環境戦略研究機関 上席研究員 (1998~2002)
(財) 地球産業文化研究所 (1998~2001)
(財) 日本エネルギー経済研究所 (1991~1998)
◎学歴
大阪大学大学院博士後期課程物理学専攻 理学博士
同上 博士前期課程
大阪大学理学部物理学科
膳所高等学校
◎専門
気候変動問題,エネルギー問題,途上国開発問題,BOPビジネス
◎業績
京都議定書の市場メカニズムであるCDMにおいて,世界最初の方法論承認を獲得
◎Web:
http://www.pear-carbon-offset.org
http://egao.lighting
https://www.iges.or.jp/jp/about/staff/matsuo-naoki
http://www.climate-experts.info